今週の始まりからドイツでもお店の中に入る前や公共の乗り物の中ではマスクの着用が義務付けられるようになりました。
お店に入る時も、入店前に着用しなくてはなりません。
うちの近くに私が好きなベトナム料理のレストランがあります。その隣にあるやや高価目なイタリアンに比べるととても廉価で、ベジタリアン用メニューやグルテンフリーのメニューもあり、そしておいしいです。
先日もこのお店に注文したものを取りにいったら、お店の方が慌ててマスクをくださいました。カバンにはマスクが入っていましたが、私は着用せずに入店してしまいました。
「お客さんがマスクをしていないとあなたも罰金、私も罰金」ということで、マスクをくださるのは親切だなと感激しました。このお店はいつでも誰にでも、とても優しいです。
そしてこのお店ではロックダウンが始まってからずっと「必要な人はどうぞ」と、トイレットペーパーも無料で配っています。
このレストランは家族経営で、とても真面目にお店を運営されていて、それがご近所でもとても好評です。今はテイクアウトだけですが、年配のお一人暮らしの方から学生さん、そしてご家族連れまで、いつ行っても今もたいてい他のお客さんがいます(トイレットペーパーのおまけが目的ではないと思います)。
このお店のオーナーの女性は推定私より少し年上くらいで、ベトナムのハロン湾の近くの出身です。
店内にハロン湾のきれいな写真がたくさんあり、他のお客さんがいないときにはよくハロン湾のことを話してくれました。
私はベトナムには行ったことがありません。
「いつか行ってみたいな」というと「必ず行ってみて。とても美しいから」と彼女はいつも力強く言います。
先日、私が支払いを済ませようとカバンからゴソゴソ財布を取り出していると、この女性は「私はいつ、またハロン湾に行けるんだろう」とぽろっと独り言のように言いました。
うまく説明できませんが、今までになく故郷が恋しい、その気持ちがしんみりと、でもずっしりと伝わってきました。
こういうときはなんと言えばいいのでしょうか、私にはよくわかりません。
「はやく騒ぎが収まって、またきれいなハロン湾に行ったら話を聞かせてね。」
とかなんとか言いながら、このお店のご家族には本当に元気でいてもらいたいと思いました。
このレストランに限ったことではもちろんありませんが、今の事態が1日も早く終息し「普通の生活」に戻れることをあらためて願わずにはいられない、そんな日でした。

