夏になり、さらに学校の夏休みが始まりお子様のいるご家庭ではいっせいに休暇にお出かけになるこの時期、暑さのせいだけでなく、空気もご近所もなんとなくぽわーんと静かになります。
もちろん市街地に行けば観光の人達で大賑わいですが、私は自分のいる場所のこの季節独特のまったりする感じは結構気に入っています。
リューベックに住んでいた時も、世間の夏休みには私は家にいました。週に必ず一度は、携帯などを通信機器を一切持たずに海と反対の方角へ …人の少ないほうへ… トラーベ川添いを往復で何時間も歩くことを習慣(自分への課題)にしていました。
リューベック市内からでも15分も歩くと、牧草地帯がずーっと広がっています。
北ドイツはすでにデンマークへと続くユトランド半島の付け根の部分、地形はとてもなだらかです。
色々なことを考えたり、もしかしたら何も考えなかったり。石造りの街の暑さを逃れて牧草地帯の小道を歩くことは、私にとっては必要で貴重な時間だったのだと思います。
短い北方の夏、今でも真上から照りつける北国の夏の太陽と、石と緑の香りの季節になると、このリューベックから続くなだらかな川沿いの道を思い出します。それは今から十数年前(本当は20年くらい前)、通学の電車から毎日毎日、眺めていた景色です。
ここ数年間で私は色々な国に移り住んできましたが、結局また北ドイツに戻ってきました。この北国の牧草地帯の景色は、案外深く、自分を形成する「要素」のような部分に根を張っているように思います。
不思議と懐かしい、大好きな北ドイツの景色です。