私の手帳には、なにも書かず大切にとってある絵はがきが数枚、いつでもはさんであります。パリの絵はがきです。
たいていの人に違わず、私はパリが好きです。とても好きですと言えると思います。市内のどこがとか何がとか特定の何かではなく、その街の空間のようなもの全体が好きです。一番最近訪れたのは今年の2月でした。同行させて頂いた方のお蔭でさらに市内を深く見聞することができ、やっぱりパリはなんか良いなと私は一人納得しました。
住む前は、正直「パリか。まぁ良いかも。」くらいに思っていました。冬の終わりの、まだ雪が降る時期に部屋を探し、春の明るさ、夏の賑わいと大好きな秋、そしてまた冬へ…気がついたら、大げさにいえば自分の生活や生き方のようなものも、今思えばパリを通してとても好きになっていた気がします。
色々な人に出会いました。市内の徒歩で行ける場所はなるべく歩いて行きました。たくさんのものを見て、そして自分自身たくさんんのものを作りました。パリでのアイデアは今でも温存しているものが私の中にはたくさん眠っています。それが今の私にとって、ほんの少し、錯覚のように自信につながっていると自分自身では思っています。
たまにネットの地図を見ると、ついでにパリを見ることがあります。4区のサンポールに1年弱借りていた私の大好きだった部屋の窓は、その外にある木の扉が私が開けた通りの形でストリートビューで今でも見ることができます。
私は絵はがきを、私に「パリに行って物作りをしてごらん」と背中を押して下さった方に出そうと思っていました。その方は、事故にあわれてしまいました。それからずっと、今でもパリの絵はがきは、誰に出すかまだ決めていないまま、手帳にはさんであります。
いつかは、将来の自分に絵はがきを出そうかな。
ベルリンもそうなのですが、パリのことはたくさん書きたくて、何も書けません。いつかまた書くかもしれません。
今の私はもうパリに住んでいませんが、自分にとってそんな場所が地球上にあるということが、私には幸せです。