「リスボン」という地名を聞いて、私にはあまりピーンとくるものは始めはありませんでした。
たとえば:
ベルギー → チョコレート
ウィーン → ザッハートルテ
草加 → おせんべい
マイセン → 食器
上海 → 小籠包
鎌倉 → サブレー
などなど。咄嗟に考えてみても、色々と地名と名産物などがピーンと合う地名も世の中にはあるかと思いますが、リスボンには暖かい場所、くらいのイメージでその「ピーン」が私にはありませんでした。
ただ、私の知人・友人や世界中の雑貨にくわしいバイヤーさん方は、「リスボンに行ったら手袋」とおっしゃっていることを何度か小耳にはさんだことがあったので、私はいつのころからかリスボンで手袋を買うことに憧れ「そうか、リスボンにいったら手袋だな」と、心の中にメモをしておきました。
が、肝心の住所や諸々がわかりませんでした。でも心配は無用で、インターネットで「リスボン 手袋」と検索すると、すぐに該当すると思われる手袋屋さんが見つかりました。
本当に小さなお店で、私が行ったときには店員さんの女性が1人、接客は1:1でゆっくりといろいろなことをお話してくださいました。手袋の素材は主に皮でたくさんの種類があっても、私はすぐに2つに絞ることができたのですが、どちらか1つがどうしても選べませんでした。
正直なことを言えば、もしかしたらドイツの百貨店や革専門のお店があれば同じような良い手袋が、やはり同じように思ったよりも廉価に買えるかもしれないな、と一瞬思いました。
でもここはリスボン、何年も憧れてきたリスボンの手袋屋さんです。普段から服飾にこだわってお金を使うこともありません。店員さんの女性(もしかしたらオーナーの方かもしれません)も、とても気さくで手袋への愛情も伝わってきます。
ということで、私は大人買いをしました。両方買ったのです。私にとっては世界最強にかわいい2組の手袋です。
とても嬉しくて、秋になって寒くなるのが楽しみになり、このときリスボンに行ったのは初夏だったにもかかわらず私はこの2組の手袋のためにと、手や指の手入れなどを買ったその日から始めました。
夏の間もずっと手と指の手入れを続けました。毎日ハンドクリームを使いました。あっという間に時間が流れ、その年の秋。私ははたと気がつきました。
私 に は 冬 で も 手 袋 を 使 う 習 慣 が な い。
さすがに真冬に自転車に乗るときは、近所のスーパーで5ユーロ=700円くらいで買った手袋(これはこれで、もこもこで形がかわいいのです)を使いますが、普通に出かけるときは手袋などしていたら手がすぐに熱くなってしまうので、必要ないのです。
北海道よりもさらにさらに北緯が高い、日本からみたら極寒と感じられるかもしれない北国に私は住んでいますが、手袋は自転車に乗るとき以外は使わない、そのことに自分でも気がつき大変驚きました。私は指の先まで寒冷地仕様なのです。もしかしたら白くまかもしれません。
それに、まさか真冬の風雨・雪の中、世界最強にかわいい手袋を自転車に乗ってスーパーへ行くときに使う気持ちにはなれません。それに南国・ポルトラルの手袋はちょっと耐寒性が低いです。
本当はあと何組か手袋を私は持っています。ほどんど出番がなく、1年中待機しています。私の最強にかわいい手袋は…未だに大切にお店の紙に包まれています。たまに年に何度か取り出して、新鮮な空気にさらしたり身につけてみて眺めています。
何はともあれ、他に何か自分のために買ったわけでもありません。2組の手袋はいつまでも私の大切なリスボンの思い出の品です。