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私はどこかの国や地域の特有の作品―芸術品と言われているものもそうでないものも―見るのが大好きです。美術品や楽器、食器やジュエリーはもちろん、文化や生活習慣と直結した「街 」は、その国の「人」の文化作品として一番生活に密着しているように思え、とても愛しく感じます。
シンガポールはとても小さな国でも、様々な人々が集まり文化を持ち込み、独特の雰囲気を作り出しているようで、私に「コスモポリタン」という言葉を連想させます。
この国で見る装飾品は、いちいち私の気に入ります。カフェの壁にふと飾ってある絵やオブジェ、計画的に整備された街並と個性的なビルや建物とその合間にある公園や木々の間の取り方などの、クラシックとモダンのバランスが微妙で美しく、それはシンガポールに住む人々が自分達の文化を守りながら極めて近代的で、未来志向で生きている様子にとても似ている気がします。
街の安全さと清潔さに感心しながらふと考えました。人が街を作るのか、街が人を作るのか。もしかしたらこの国の住人…陽気で自由で規律正しく、しかも幸せそうに街を行きかう人々こそが、シンガポールの文化作品なのかもしれません。