免許は持っていても生まれてから一度も自動車を所有したことのない私は、どこに行っても行動の基本は電車と徒歩です。それはもちろん日本でも同じです。車を運転する機会といえば、基本的にヨーロッパ内で旅行をするときにレンタカーを借り運転することが一番多いです。
不思議なことに普段地下鉄で移動する場所を、一駅か二駅だから歩こうと魔がさすととたんに迷うのが東京です。
数年前の暑い夏の午後、私は都内である方とお仕事のお話をさせていただき、とても良いすがすがしい気持ちでその場を後にしました。その場所から地下鉄で一駅で、私は自分の家までまっすぐ帰れる地下鉄に乗れます。普段は乗り換えまでのその一駅分も電車に乗るのですが、その日は夏の太陽がまぶしくなんともさわやかな気分の夏の午後。その後の予定も何もない明るい夏の午後! ふと私はその一駅を歩いてみることにしました。この一区間は電車で約3分。本当にたいしたことのない距離です。
が、道に迷いました。
方向は合っていたはずなのですが、道が曲がっていたのでしょう(そう思いたいです)。しかも普段通るのは地下。地上とは景色が違うのです。あたりまえです。
私は道に迷ったら、すぐにどなたかにお尋ねすることにしています。そうすればひどく間違った方向に行くことはありません。
日本の場合、宅配便の方にお時間がありそうなら道をお伺いしたいところなのですが、あいにく宅配の方にお会いしなかったり、あるいはお忙しそうだったりすると、道をお伺いするのもさすがに気が引けます。
その日はなかなか宅配便の方にお会いできず、気分はさわやかでもさすがに日本の暑い夏なので、少々途方に暮れてうろうろしているところに現れたのが、日本を代表する「生きて腸内に到達する乳酸菌シロタ株が1本に150億個入った乳酸菌飲料」を作る会社、ヤクルトの配達の女性です。
私は一番好きないちご味のジョアを頂きながら、道をお尋ねしました。おいしい健康的な飲み物を作る会社の女性は本当に親切でした。丁寧に道を教えてくださり、私は大変感激しお礼を申し上げ、また歩きはじめました。が、間もなくまた迷いました。
と、そこにまた同じ飲み物の会社の方にお会いしました。その時には本当に天使か何かに見えました。
結局その日、私は一駅分歩くの間にいちご味のジョアを4本飲み、やっと目的の駅にたどり着きました。
口の悪い友人らは、その配達の女性は先回りをした同一人物だと笑うのですが、違うのです(と思います)。
4人の方々は皆さんとても親切に道を教えてくださいました。
だから(というほどでもないですが)私はフランスやドイツでこの日本の乳酸菌飲料を見かけると、つい購入することがあります。
なんといっても日本の生きたまま乳酸菌飲料は元祖ですし、ヨーロッパ製の「生きたまま乳酸菌飲料」はこの10年くらいでやっと市場に出回るようになった新参者のまねっこです。日本食には私は全くこだわりがありませんが、ヨーロッパで飲む日本の乳酸菌飲料ヤクルトは日本の味の一つです。
迷子になる率でいえば、私にとって東京はかなりの高確率です。昔通っていたデザインの学校から、材料がなくなって近所のハンズに買いに行き、教室に戻ろうと思ったら工事中につき遠回りをして迷子になったこともあります(←これはダメすぎなやつと思う)。
日本の暑い夏に迷子になっても、おいしい飲み物があればいくらでも歩けるなぁと気楽に思える心の軽さ。その心の軽さこそが幸せだと思いました。人さまの心の温かさに触れいちご味のジョアのおいしさを再確認した、私の東京での夏の良い思い出です。