あっという間にまた展示会の季節がやってきました。色々な情報を見聞する毎日です。
ファッションのニュースは、様々な媒体で「2010年の春夏はこれ」と展示会の速報を流し、私はパリやミラノ、ニューヨークなどの美しい服飾の世界を毎日チェックするのが楽しみです。頭のてっぺんから足の先までクリエイターに作られた美しさは、本当に刺激的です。
それと、今更確認するわけではありませんが経済のニュースでその美しい世界を作っている人達の世界がいかに深刻な不況に陥っているかを知ることも、私には他人事とは思えず大切なことです。
どんな大きな企業も、オートクチュール、プレタポルテから小さなアトリエまで、欧州でも物が売れません。もちろん服だけではなく、高額な時計や車も同じです。あえて服でいえば、売れているのはスペインやスウェーデン、イギリスの廉価な服のメーカーぐらいでしょうか。
半年前のバーゼルで話を聞いたスイスの時計業界の方々は「不況は一時的なもの。夏前にはまた勢いが戻るさ。」という意見が多く(あるいはそう信じたかった か)、実際新聞・雑誌にもそういった意見が大多数で載っていました。でももう誰もそんなことは信じていません。数日前の新聞で、超高級時計の生産元でも、 20-30%程度の値下げを検討していることが話題となり、そうすると当然出てくるのが「今までの値段はなんなんだ」という意見で、値下げしても消費者の 不信が募り、売上げがさらに悪化という記事を目にしました(Handelsblatt)。…高級時計の値下げ政策ねぇ…うーんどうなんだろ、長続きしないような気はしますけど。
よく欧州のデザイナー達と話すことは、欧州はもう展示会自体が飽和状態の様相を帯び、「来場者が増えた」ということをあたかも景気がよくなっでもいるかのように報道されても、実際に知人や私達が出展するような展示会は「来場者が増えたのは、買わない来場者が増えたから」と、出展者達は口を揃えます。
また BREAD & BUTTER がスペインからベルリンに戻ってきたかと思ったら、ヨーロッパから飛び出してアジアや中東を中心に方針を変えるショーもあり、もう私などはこれからどんな時代になるのか皆目検討もつかない、たださらに混沌とした時代が始まるのかもと漠然と思う状態です。
パリの超有名ブランドの広報の人が、N-TVのインタビューで売上げ不振への対策を聞かれ「これからは着てもらえる服を作らないと、売れない」と答えてい るのが印象的でした。一瞬「着れない服作ってたのかな」と私は愚考しましたが、95%の人たちにスタイル的に着れないような、ほっそーーーいモデル体型の服を作るよりも、自然のままの体型で多くの人達が切れる服を作るほうが、高感度も売り上げも、間違いなく上がるとは思います。
毎シーズン楽しみにしている非現実的でも美しい、でもモデルさんしか着れないようなサイズで表現される世界が不況で衰えていくとしたら、それはそれで寂しいことですが、でも、まぁ無理のない体型のままで多くの人に合うバリエーションがある服のほうが、私にとっては大歓迎ですけどね。