日本の方とお話させていただくと「日本の食べ物が恋しいでしょ」「日本の何々が恋しいでしょ」のような、「日本が一番でしょ」ということをよく聞かれます。
「いや、それほどでもありません」というのもイラっとさせそうですし、私自身は日本が一番なこともあると思いますしそうではないこともあるし、そこに答えはないと考えています。何が何番でも一番でもそうでなくても、日本は日本なので大好きです。
食べ物は一番よく聞かれる質問ですが、特に何が恋しい、日本のあれが食べたいという気持ちに陥ったことは私は今までありません。ドイツやフランスや、ヨーロッパにある普通のスーパーにあるもの普通に満足しますし、日本のスーパーより気に入っていると言っても嘘ではないので「もちろん日本食が恋しい」という答えを期待されている質問には本当はかなり戸惑います。
「なにか恋しいものあるっけ…」と考え正直に、
「…抹茶ラテとか、日本のカレーとかですかね」と答えたりしています。
(↑ヨーロッパで買えます。)
これは私は母にとても感謝していることの一つで、
「あの食べ物がないと生きていけない、という人にならないように」「お母さんが作るあの料理が食べたい」とならないようにと、かなり雑食で育ててくれました。料理が得意な人ではなかったので母自身も拘りがなかったのだと思います。
おかげさまで私はどこの国でも雑草のように元気に生きてくることができました。
何か日本のもので懐かしい、恋しいものを敢えて挙げるとすると、私にとっては日本の夏休みに象徴されるようなことです。
セミの声、花火、歩道に連なる夏祭りの提灯とか。
ドイツは今のような5月末で日の入りが21時半過ぎ、これからさらに明るい時間が長くなりますし、花火に適する暗さになるには深夜過ぎまで待たなくてはなりません。それ以前に花火はヨーロッパでは夏ではなくて大晦日にたくさん打ち上げられる、年越しの風物詩です。
セミもいません。
こういったことを総合して「日本の夏が恋しいですかね」と答えると
「えー暑いのに」と100%の確率で言われます。
…ドイツも最近の夏は日本に負けないくらい、本当に暑いですけどね、同じような暑さなら日本のほうがまだマシなのは、クーラーがあることです。
ドイツは一般家庭には普通はクーラーはないですから。
そうか、日本のクーラーも恋しいものの一つかもしれない。
今気がつきました。やはり懐かしく恋しいのは、私にとっては日本の夏のものということになります。
