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12月になると暗くなるのがますます早くなり、クリスマスの飾りがあちこちで見られるようになると、私はドイツで一人暮らしをしていた時のことを思い出します。
12月の、不思議と誰もが家族や大切な人のことを思い出し、そわそわと贈り物や季節のカードの準備をするころになると、私はなぜか一人でいることを好みました。同じように一人で暮らしていたり、自分の国を離れている友人知人など、普段は友達と出かけたり食事をしたりしているのに、12月はそれを断ることが多く、一人でふらふら、クリスマス市を見たり買い物をする人を見たり。なぜそのようにしたかったのか、私にはそれが未だにわかりません。
ただ、ちょっとさびしい時に、そのさびしさを追い詰めある意味、満喫したかったのかもしれません。さびしい時に見るクリスマスの灯りはひときわきれいで…心に染みるくらいきれいで…、すれ違う人はみんな例外なく楽しそうで、幸せそうで。一人になって「孤独」を煮詰めている自分とは対照的で。…実際に自分を「孤独」だと思っていたわけではありませんが、私は一人でした。
これが私の12月の思い出です。
今でも12月になると、ドイツのクリスマスの景色を思い出し、いろいろな国に散らばって一人でいる家族や友人に思いが馳せるのです。